鼻血の話

UPDATE:2004.06.09

 冬の訪れを何に感じるかは人によりそれぞれだと思いますが 鼻出血で来院される患者さんの数に冬の訪れを感じる耳鼻科医は多いと思われます。冬が近付き、空気が乾燥して寒くなると鼻出血も起こりやすくなってきます。
 鼻の真ん中に鼻中隔という軟骨でできたついたてがあります。鼻に指を入れてみると左右の鼻の穴がつながっているという人はあまりいないはずです。
 この指の当たる付近がリトル部位といって、鼻出血の好発部位です。このほかにも鼻の奥の方に鼻出血が起こりやすい場所がありますが、座った姿勢で鼻からでてくる出血が多いときは鼻腔の前の方からでている可能性が高くなります。
 このような場合は指で鼻を押さえて10分くらい待っていると止まることが多いものです。
 とはいえ、後ろからでる場合はなかなか有効に圧迫ができないので止血が困難な場合があります。のどの方にどんどん血が落ちたり、鼻を押さえても出血の勢いが収まらない場合はできるだけ速やかに耳鼻科を受診してください。

図1

図1

出血しやすい鼻の粘膜は図のように見えます。
→図1は拡張した血管が走っているところです。
 比較的小児に多く見られるタイプです。

図2

図2

 ←図2は鼻の粘膜に膨らんだ血管が飛び出しているところです。このような状態は成人に多く見られます。
 時として鼻腔や副鼻腔の腫瘍、血が固まりにくくなるような病気が鼻出血の原因になっていることがあるので注意が必要です。

 一般的に鼻出血を止めるために細く裂いたガーゼに軟膏をつけたものを詰めたりします。有効に圧迫されないと、とりあえず出血が止まっても血管の拡張が残るため、出血を繰り返しますから、できるだけ少ないガーゼでピンポイントに止血するのが腕の見せ所になります。
  最近ではスポンジ様のメローセルタンポンもよく使われるようになりました。ガーゼよりも刺激が少なく、抜いた後の粘膜の傷が少ないのが特徴です。あのERでもスタッフが鼻出血を止める為にこれを探してる場面がありました。
  診察時に激しい出血がなく、出血点になる血管の拡張が確認される場合、その血管の焼灼術を行います。

図3

図3

→図の3は薬剤による焼灼を行ったところです。
 粘膜が白く焼灼されています。その後、創面に軟膏の塗布あるいはガーゼによる圧迫を行います。このとき適応外使用なのでたぶんあまりやっているところはないと思うのですが、口内炎用の軟膏であるデキサルチン軟膏が創面への付着がいいので非常に有用です。
 さらに時にはこの軟膏に止血用材料のアビテンを混ぜ合わせると、狭くてガーゼが入りにくいような場所でもある程度圧迫が可能で、いい結果が得られることがあります。

以上の処置で止まらない場合、または奥の方で有効に圧迫止血困難な場合は、風船状になった専用のものを鼻に入れてふくらませ止血するか、あるいは鼻腔に来る血管を上流の方で縛るような処置が必要になりますが、これらの処置は入院が必要になります。

いずれにしても鼻出血を繰り返すときは耳鼻科に受診してください。

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